都市上の群衆に対する個別誘導(メガナビゲーション)に関する研究に取り組みました.このような大規模な都市を対象とした情報システムを実現するために,"(1)個別誘導に関する研究"と"大規模な社会情報システムの検証に関する研究"に取り組みました.前者の個人の性質や状況に合わせた誘導を実現するために,誘導するエージェントを個々人に割り当てる手法について研究しました.また,後者の大規模な社会システムの分析を実現するために,大量の被験者を用いて実証実験をするのではなく,マルチエージェントシミュレーションと被験者実験を組み合わせる拡張実験という手法を研究しました.
京都大学情報学研究科社会情報学専攻メガナビゲーション研究グループ(石田亨教授)として,(株)KDDI研究所の協力を得て,実証実験を行いました.本実験は,エージェント技術を用いて,GPS携帯電話のユーザに災害情報や避難誘導などの位置依存のサービスを個別に提供するものです.実験の参加者は,各自のソフトウェアエージェントから, 避難場所の位置や周辺の情報をGPS携帯電話で受け取り,指定された場所へと避難します.この実験を通じて,社会的なインフラとして定着してきたGPS携帯電話を用いた個別誘導の可能性を検証しました. ソフトウェアエージェントを通じてユーザに情報を送る技術として, 戦略的情報通信研究開発推進制度の助成を得て, 京都大学, 日本アイ・ビー・エム(株), NTT西日本みやこ支店により開発された大規模エージェントシステム(Caribbean/Q)を用いました.
拡張実験では,利用者をエージェントによってシミュレートすることで,実験に参加する人間の被験者の数を抑えた上で,多数の利用者が当該システムを使用する状況を擬似的に再現するものです.この拡張実験を行うことで,大量の被験者による実証実験を行うことなく,システムの問題点を洗い出すことができると考えています.
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